スポーツ界は数値社会 野球選手の評価はデータで決まる

2010/04/01

〜同じヒットでも場面で重みは異なる。それを数値化したWPAで選手を評価〜

東海大学理学部情報数理学科 鳥越規央

統計学の中でも現在注力しているのが,セイバーメトリクスを中心としたスポーツ統計学です.セイバーメトリクスとは,野球のデータ解析手法のことです.

野球の本場、米国メジャーリーグでは、データに基づいた選手評価が徹底しています。打率、打点、防御率だけでなく、セイバーメトリクスによって生み出された指標によって合理的に行われています。

とりわけWPA(Win Probability Added)という指標は選手のゲーム貢献度を示す指標として有用です。WPAは選手のプレーがチームの勝利確率をどれだけ変化させたかによって算出し,試合序盤でのヒットと、試合終盤で勝利を決定づけたヒットの違いを定量化する試みであります。勝利確率は、アウトカウントや出塁状況の情報を基に「マルコフ連鎖の理論」を用いて定式化したアルゴリズム(計算式)に、実際の過去の試合のデータを代入して求めます。

(データ協力:データスタジアム株式会社)

 このグラフは2009年8月23日の楽天vs.オリックス戦の勝利確率の推移を示したものです。6回裏同点1アウト1・2塁というシチュエーションにおける楽天の勝利確率は0.636ですが,ここで3番打者の鉄平選手が3ランを打ち3点勝ち越しました。その結果6回裏3点差1アウトランナーなしとなり,その状況での勝利確率は0.918にハネ上がりました。これにより鉄平選手は0.282のWPAを獲得したことになります。鉄平選手は残りの3打席で凡打に倒れており、この日の試合WPA合計は0.24でした。4番山崎武司選手と5番草野大輔選手は、同じ5打数2安打でしたが、安打を打った場面の違いによって、WPAに若干の違いがでるのです。

メジャーリーグではこのように選手のパフォーマンスがすべて数値によって評価され、そのデータは、選手の報酬や契約に活用されているのです。さらには、チケットやグッズの販売、テレビ放映権、広告収入などとの関連も数値化し、選手の市場価値を評価しているのです。  こうした選手評価は今後、日本でも徐々に浸透していくと思われます。実際、日本ハムはBOSと呼ばれるスカウティング情報システムを構築し、選手の獲得や育成に活用しています。日本のプロ野球にも、メジャー流のセイバーメトリクスを活用した経営手法が、ますます導入されていくことでしょう。

(週刊東洋経済 2010年3月20日号に寄稿した文章を加筆修正しました)