スタンフォード留学記

2007/06/01

東海大学 理学部 情報数理学科 鳥越規央

早いものでアメリカに着いて2ヶ月が経とうとしています。 こちらでの生活もあと残り10ヶ月となってしまいました。

生活環境にもやっと慣れてきました。 どのくらい慣れてきたかというと、最近になってやっと時差ボケが解消しました。 またバスの停留所では、ちゃんと左を向いてバスを待てるようになりました。 だいぶ慣れてきたといえるでしょう。

冗談はさておき、アメリカは初上陸なものですから、 見るもの聞くものすべてが新鮮だったりします。 なかには「あ、これ日本と同じじゃん」と思うことも多々あります。 テレビで野球中継を見ていたときのことです。 キャッチャーがパスボールをした場面で、 解説者が「キャッチャーはちゃんと球を正面でうけなきゃだめですね」 なんてことをいうわけです。 「なんだ、日本の解説者と同じこと言ってる。」  またアフラックのCMのあひるや、MAZDAのCMの「スンスンスーン」 の曲も一緒だなんて、 そのようなことを書き連ねると、きりがございません。 ちなみに今、毎日ニュースでとりあげられているのが、 川に迷いこんだ親子クジラの話題です。 土日はそのクジラを観に大勢の群衆が川の周辺に集まってます。 なんだか「タマちゃん現象」を思い出した次第です。 ただ日本と違うのは、クジラに名前はつけてませんし、 群衆相手に商売する人もいないということです。

話が完全に留学の話題から逸れています。本題にはいりましょう。 スタンフォード大学についての講釈はこちらのリンクにまかせるとして、

http://www.stanford.edu
スタンフォード大学

とにかく歴史の重みを感じる、荘厳なる大学です。 こちらでは統計学科にお世話になっています。 ほぼ毎日のように統計学関連のセミナーが開催され、 学内、学外の研究者による発表が行われています。 私もちょくちょく参加しています。 なかでも印象的だったのが、企業と大学院生の合同ゼミというものでした。 これは今をときめくYahoo! や google といった大手IT企業、 そして日本ではあまりなじみがないかもしれませんが ALLSTATEというアメリカ大手の保険会社の統計研究者と、 博士課程の大学院生が一緒にゼミを開くというものです。 大学院生は発表内容のアブストラクトと一緒に履歴書も添えています。 そうです。スカウティングなのです。 私としては、時代の先端を走る企業が、 統計学をどのように使っているかということについて、 生で聞けたということで、大変興味深かったです。

今回はスタンフォード大学で、授業に潜入してみたときのことをお話したいと思います。

その前に、予備知識を紹介しましょう。
スタンフォード大学では3ヶ月ごとにsessionが設定されています。 日本でいうところの「学期」ですね。
9月~11月 autumn session
12月~2月 winter session
3月~5月 spring session
6月~8月 summer session
となっています。

「あれ夏休みは?」と思う方もいるでしょう。 なんとスタンフォードには夏休みはありません! 夏にも授業は開講されています。 それだけ勉強できるチャンスを与えているということなのでしょう。 その他高校生を対象としたサマースクールも開講しています。 ただしサマーセッションに授業をとる学生はあまりいません。 とらなくても秋、冬、春の3学期でちゃんと単位を取っていれば大丈夫な仕組み にはなっているようです。 じゃ学生が夏の間、何をしているかというと、バイトです。 企業もそれを見越して3ヶ月の短中期求人を出し、 学生が応募します。そしてみっちりと稼いで、 その金で授業料を払っているのです。

今回潜入した講義は「統計学序論」「ノンパラメトリック検定」「計算」 の3つです。 「統計学序論」は週3回の講義と週1回のディスカッションの計4回、 「ノンパラメトリック検定」は週2回、「計算」 は週3回の講義と週2回の演習の週5回。 なお1回の講義時間は75分です。 アメリカの学生はよく勉強をするとは聞いていましたが、 それは能動的にすることもさることながら、 しなきゃいけないシステムがあるということも一つの要因なのかもしれません。 授業の間隔を狭めることによって、 忘却曲線が底に着く前にまた繰り返し学習させているのです。

さて、そのなかでも「統計学序論」について詳しく紹介します。 この講義は確率や統計の基礎的な事柄について学ぶものです。 講義教室は500人収容で、劇場みたいに席の傾斜がかなりきつくなっています。 東海大学では6号館のC棟にあるような教室にあたるものだと思ってください。 そこに受講生約300人がはいっています。

講義開始は2時15分。講義担当の教授は5分前には教室に来て、 講義の準備をしています。これは他の講義でも同じです。 講義を担当する先生は早めに教室にはいってます。

講義が始まりました。 それまでざわついていた教室内はしーんと静まり返ります。 誰一人として私語をするものはいません。 数人、小声で隣に話しかける者もいましたが、それも二、三言で終わりです。 周りに迷惑かけるような私語などできる雰囲気ではないです。 というか、私語などしてたら怒られますよ。 「誰に?」「教授に?」 いえ、他の学生からです。 「私が講義を聞くことを妨害する権利がどこにある!」みたいな感じで。  先ほどの話ともリンクしますが、 自分で稼いで授業料払っているわけですから、 授業に対する真剣味が違ってくるのでしょうね。 だから講義担当の先生も遅れてくるなんてことはできないわけですよ。

それから、講義の途中で学生からの質問が数多く出てきます。 私が聞いた講義の中でも最低10回は確実に出ます。 どんな些細なことでも質問します。また教授もそれに対して詳しく解説します。 日本だと「こんなこと聞いたらばかにされるのでは」 みたいな感情が働いてなかなか質問できないといった土壌があるようですが、 こちらではそんなことおかまいなしです。 「わからないから講義を聞いてるんだし、 この講義の中でわからないことを解決したいんです。 わからないまま帰ってたら、なんのために講義を聞きに来たの?」 ってな感じでしょうね。

あと、ちょっと驚いたのは、講義を受けている学生の2割が、 ノートパソコンを持参していたということです。 私はそれを見て「ノートに書く代わりに、パソコンに打ち込むのか。 すごいなぁ、進んでるなぁ」と感心したのです。 が、しかし!よーく見たらですよ、 そういう使い方をしている学生はほんのわずか。他は何をしてるかというと、 webみたり、メールチェックしたり、チャットやったり、 クロスワードを解いたりとまぁ、教室内で無線LANが使えるのをいいことに、 各自でいろんなことやってますな。確かに私語はしてませんけどねって感じです。 裏の一面も紹介しておきました。

「ノンパラメトリック検定」や「計算」 についての報告はまたの機会にできればと思います。 (次のコラム担当がいつになるかはわかりませんが)

最後にちょっと写真ネタをお送りしましょう。 これは統計学科の掲示板に貼られていたものです。 これは本当に大学生が書いたものか、 もしくはサマーセッションに来た高校生のものか、 はたまたネタなのかは定かではありませんが、おもしろかったので紹介します。

これは三平方の定理で、斜辺の長さを問うものです。問題文は「Find x」つまり「xを求めなさい」というものですが、ここで解答者はxにマルをつけて「Here it is」つまり「ここにあるよ」と解答してます。まぁ確かに「Find」には「見つけろ」という意味ですが。。。

画像が見にくいです。問題は「Expand (a+b)^n」つまり「(a+b)^nを展開せよ」 という問題です。でこの解答者は

   (a+b)n
=   (a + b)n
=  (a  +  b)n
= (a   +   b)n
etc
と解答してます。「expand」は伸ばせという意味もあります。

1/(x-8) のx→8 のときの極限が∞になるという例題を受けて、では 1/(x-5) のx→5のときの極限は何になるかという問題で、解答は5を横にしたものを書いています。理由わかりますか。 なんかこれネタっぽい気もしないではないですが。

√2/2を約分したら√ だけ残ったという。。。

16/64を約分しているのですが、よく見てください。分子分母の6を消して1/4としているのです。結果正解を導いてはいるのですが、これははたして。。。

これもネタっぽいです。(1/n)sin x でnを約分して残ったのがsixだか ら答えは6!