ギャンブルの愉しみ

2006/12/15

2006.12.15
東海大学 情報数理学科 志村 真帆呂

—-ギャンブルで負けない方法?簡単さ、ギャンブルに手を出さないことだ。—–

最近、部屋の片付けをしていたら “How to gamble If you must.” という副題のついた本が出てきました。これには、やむを得ない事情でギャンブルをする破目になったら、 どんな戦略で臨んだらよいのかが数学的に解説されています。最善の戦略については、この拙文の最後で触れるとしましょう。

ギャンブルで儲けたいと思ったら、潤沢な資金を持ち胴元になることです。ただし、儲けが出せるだけのお客が呼べないと悲惨。近年では、地方の公営ギャンブルがお客が集まらずに大赤字を出し続け、 地方自治体の財政を圧迫して社会問題になっています。また資金が乏しいと、たまたま大勝ちされた時に配当が払えなくなるなどの リスクが高すぎていけません。言うまでもなく、日本で勝手にギャンブルの胴元になると捕まるので要注意。

話を元に戻してなぜ胴元が有利なのかですが、 どんなギャンブルにも胴元の取り分が時に巧妙に、 そして多くの場合は堂々とシステムとして組み込まれているからです。たとえば、日本の公営競馬、競艇、競輪では払戻し金は75%なので 25%は胴元の取り分になります。

ルーレットは1から36までの数字に加え、0(さらに00が加わっているものもある) があるので、公平にするとしたら一つの数字に賭けたときの倍率は37倍 (あるいは38倍)にしなくてはなりません。 しかし、実際の倍率は36倍なので、その差が胴元の儲けの期待値になります。

世の中には稀に胴元に勝てる可能性のあるギャンブルがあります。有名どころではブラックジャックがそうで、それまでに出たカードの枚数を数えること (カード カウンティングといいます)で状況判断ができ、 適切な選択(カードを引くかどうか、賭金をつりあげるなど)が可能になります。

なぜこれが有効かというと、 通常ディーラーは何組かのトランプをよく混ぜたものを箱に入れて使用するので、 それまでに使ったカードを覚えていれば残りのカードがわかり、 その偏りを利用することで有利な戦略を取れるというわけです。

カード カウンティングは、1960年代にMIT(マサチューセッツ工科大学)の関係者 を中心に盛んに研究され、この技術で生活していた人もいたようです。そんな映画「レインマン」で一般にも知られるようになったカウンティングですが、 映画でもそうだったように現在のカジノでは禁止されています。
イカサマではなく、純粋な戦略なのに禁止するのはおかしいという向きも あるでしょう。しかし、ここにギャンブルの本質が現れています。

「胴元の利益は死守」

胴元にとっては、どの客が勝とうが負けようが関係ありません。 唯一興味があるのはトータルで胴元が勝っているかどうかだけです。これを胴元の論理といいます。逆に言うと、胴元の論理が破綻する戦略を取る客は容赦なく排除されます。ですから、ギャンブルで勝って意気揚々と引き揚げられる晩は確かにありますが、 長期間勝つのは至難の技だといえます。

カード カウンティング対策も、初期にはメモを取ったり明らかに数えている客を排除するだけでしたが、 ついには客の戦略の変化を監視するところまで進み、胴元は安泰となりました。もっとも、こういった経緯によりブラックジャック自体の人気が 落ちてしまうという皮肉な事態も起きています。

大人の分別でギャンブルを愉しむとしたら、ギャンブルのシステムを考察したり ギャンブラーと胴元の駆引きの歴史を紐解くことをお薦めします。この愉しみ方には自分の懐が痛まないという素敵な利点もありますから。

最後にギャンブルにおける賢い戦略を要約すると、 短期決戦で大きく賭け、勝っても負けても早々に引き揚げる、となります。確率的に不利でも、少ない回数なら偏りがある程度は期待できる。 そこまでしても負けたなら潔くあきらめよう、ということなんですね。

—-うまく負けた奴にだけ明日はやって来る。—–