偽薬効果 ある磁石の効用についての記事をめぐって

2004/10/01

東海大学理学部情報数理学科 和泉澤正隆

「磁石じゃ痛み取れない? 医学的効果はなし/米大学発表」という見出しで、

2004年8月26日読売新聞東京夕刊に次の記事

 【ワシントン=笹沢教一】体の痛みを緩和する効果があるとされる「磁石」には、医学的な効果が認められないことが、米オクラホマ大の研究でわかった。米医学専門誌「アメリカ苦痛管理ジャーナル」の最新号に発表された。  磁石が持つ痛みの緩和効果については、磁力が神経に作用して痛覚神経の信号を抑えたり、血行をよくすることで、何らかの改善効果が得られると一般に信じられ、そのような効能をうたって販売される健康器具が米国内でも少なくない。同大の研究チームは、痛覚信号の抑制効果について確認するため、四十九人の健康な人に磁石と偽の磁石のいずれかを装着。被験者の体の一点に軽く触れるテストを行い、痛覚神経より敏感な触覚神経に信号の抑制がみられるかどうかを調べた。その結果、磁石による信号の抑制効果は確認できなかった。  米国でも日本と同様に磁石を使った健康器具の支持者は多く、肩こりや慢性の関節痛が和らいだと主張する人もいる。こうした“効き目”について、同大のデビッド・ギャリソン博士は「偽薬(プラシーボ)でも効いたと思い込むプラシーボ効果ではないか。磁石をつけた腕輪状の健康器具で、腕輪の圧覚が脳に伝わり、結果として手首からの痛みの情報が制限されることも考えられるが、それは磁石の効果とはいえない」と説明している。

が掲載されました。

フリー百科事典『ウィキペディア (Wikipedia)』[http://ja.wikipedia.org/wiki/] によれば、

  • 偽薬(ぎやく、プラセボ、プラシーボ、placebo)は、本物の薬のように見える外見をしているが、薬として効く成分は入っていない、偽物の薬のことである。成分としては、少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響のないブドウ糖などが使われることが多い。Placeboはラテン語で、「私は喜ばせる」の意。
  • 偽薬効果(ぎやくこうか)、プラセボ効果とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込むことによってある程度の改善がみられることを言う。この改善は自覚症状に留まらず、客観的に測定可能な他覚症状の改善として現われることもある。また逆に、偽薬によって、望まない副作用(有害作用)が現われることをノセボ効果という。
  • 偽薬効果が存在する可能性は広く知られている。特に痛みや下痢、不眠などの症状に対しては、偽薬にもかなりの効果があるとも言われており、治療法のない患者や、副作用などの問題のある患者に対して安息をもたらすために、本人や家族の同意を前提として、ときに処方されることがある。
  • 一方で、薬の臨床試験における偽薬の役割は重要である。薬を飲んで治療効果があったとしても、それが偽薬効果によるものなのか、本当の薬理作用によるものか、本物の薬の治療効果を実験的に明らかにするための比較対照試験で偽薬が利用されることが多い。
  • 被験者の同意の下、出来るだけ偽薬を用いた比較実験を行うことが、学問上の研究の信頼性を得るためには必要とされている。

『ウィキペディア 』の説明の比較対照試験は、道家先生のコラム「統計的仮説検定の社会へのかかわり 3.臨床医学への応用」で「・・・臨床試験において、標準薬に対し、開発している新薬の有効性の比較検定をおこなう・・・」と書かれている部分にも対応しています。

さて、上記の記事が載った後、さっそく、
ピップエレキバンの掲示板・エレキ版[http://www.elekiban.com/html/bbs.cgi]に、

「こういう記事がででましたが。。」

投稿者:質問者 2004/08/26(Thu) 16:26:47
度々、愛用させていただいております。
読売新聞に以上のような記事もあるようですが、真偽はどうなのですか?
エレキバンの効き目には科学的な(具体的な数値による)証明というのがあるのでしょうか??
「本当はどうなの? 」
投稿者:イタタ 2004/08/26(Thu) 18:07:04
ピップエレキバン ピンチ!?

と質問があり、ピップクラブ事務局より、

平素は私どもの商品をご愛用頂きまして誠にありがとうございます。
早速でございますが、 私どもの磁気治療器は長年の基礎研究と臨床試験の結果より厚生労働省から「医療用具」の許可を得て、効果効能を明確に標榜できる製品でございます。 その効果は様々な学会で発表された実績を有し、30年以上に渡り数多くのお客様から支持された磁気治療器でございます。安心してご使用頂ければ幸いに存じます。

と回答がありました。
世評により、関連会社の株価が大きく影響されることも多々ありますが、

株主数 48名<平成15年10月現在>のピップフジモト株式会社
http://www.pipfujimoto.jp/company/index.html

にその心配はないでしょう。
また、磁気治療器関連のTDKホームページ[http://www.tdk.co.jp/tjzzz01/zzz01000.htm]
には「磁気と生体」(磁気のはなし Part 1) 第1回「磁気と肩こり豆知識」で以下の説明があります。

わが国で磁気治療が注目されるようになったのは、磁気指輪や磁気腕輪が登場した昭和30~35年ごろ。磁気治療など、単なる気休めと思っている人が今でもいるが、医学的にその有効性はとっくに確認されていて、昭和36年の薬事法施行令の中で、治療器具のひとつとして正式に登録されている。実際、人体表面の温度分布を測定する赤外線サーモグラフィを使って試験してみると、磁気作用は明らかに血行をよくして、体温を上昇させていることがわかる。

私は、磁気治療器の効果効能についての判断はできません。
記事掲載から数日後、「偽薬」をキーワードとして次の3つの新聞社のホームページでの記事検索結果を述べておわりにします。

朝日新聞
2004/02/29  【暮らしと健康特集】乳酸菌のちから(偽薬を利用した比較対照)
2004/04/29  【米大統領選】医療保険~高額薬価、悩む高齢者、密輸した薬に偽薬[にせの薬]が入る可能性

毎日新聞
2004/07/31  大豆ペプチドの健康効果、次々確認(偽薬を利用した比較対照)
2004/06/30  治験センター発足 医師主導で新薬開発(偽薬を利用した比較対照)

日経産業新聞
2004/09/01  武田薬品、高血圧症薬が慢性心不全の改善に効果(偽薬を利用した比較対照)
2004/03/10  中国でサーズの広がりに乗じて偽薬[にせの薬]を販売