フロリダから

2004/03/01

東海大学理学部情報数理学科 土屋守正

フロリダへ専門分野の国際会議に参加するために行ってきました。フロリダへ行くというので、ゼミの学生達からはうらやましがられましたが、会議の開催される大学は、ディズニーワールドのあるオーランドとは無縁のBoca Ratonという田舎の町にあります。ドーンと広がった何もない大西洋が近くに広がっているだけのところです。G7が開かれた素晴らしいリゾートホテルもあるようですが、ちっともリゾートらしくないところです。

フロリダ・アトランティス大学(FAU)で1週間の会期で組合せ論とグラフ理論の会議が行われました。朝8:20から夕方5:20まで、特別講演と一般講演が続くハードな会議でした。ここで私は、専門の半順序集合論的グラフ理論の研究成果を発表しました。会議に少しだけ出てどこかへ言ってしまった人もいたようですが、私は朝から晩まで講演を聴いていました。時差がつらくのしかかり、眠くて困りましたが、何とかしのいで、講演に聞き入っていました。時差は英語ではjetlagなのでジェット機の時代になって生じた現象のようです。ちなみに、船で日本からハワイへ移動したときには、時差のつらさを感じなかったので、ジェット機という便利なものの副産物であることは間違いないようです。

さて、半順序集合論的グラフ理論とは、半順序集合で表現される対象をグラフ理論の手法を用いて解析する学問のことです。この説明で納得できる人はかなりの専門家と言えるでしょう。グラフ理論とは点と線を用いた図形でさまざまな現象をモデル化し解析する学問です。グラフというと、折れ線グラフや円グラフを思い浮かべてしまいますが、このような統計情報を表現するグラフとは、ここでいうグラフは違います。ちなみに図書館や書店ではグラフ理論の本が統計関係の本の近くに置いてあります。折れ線グラフの解析の学問と間違えられたわけではないと思っていますが・・・。(グラフ理論の学問的位置付けは「わかる学問、理系の最先端、大学ランキング(角川書店)」等を参考にしてください。)

少し例を挙げて説明することにします。各種の会議が計画されているとき、それぞれの会議に対して部屋(会議室)を割り当てなければなりません。当然のことながら会議ごとに違う部屋を割り当てれば、この割り当てはできます。しかしながら、たいていの場合利用できる部屋数に制限があるので、使用する部屋の数をなるべく少なくすることが求められます。会議の開催予定時間帯を見ただけで部屋の割り当てができるにはかなりの熟練が必要です。グラフ理論では、会議に対応して点をとり、二つの会議の開催時間帯に重なりがあるときに対応する点を線(辺)で結び、モデル化します。このモデルを彩色理論(グラフ理論の一分野)の手法を用いて解析して、求める割り当てを作成します。(詳細は、私の本「グラフ理論」(産業図書)を見てください。)彩色に関してはさまざまなアルゴリズム知られており、理論に基づくシステムが開発されています。ただ、常に最適な部屋の割り当てをするアルゴリズムは知られていないので、改良のために方策が求められています。一回チャレンジしてみるのもいいでしょう。

会議の時間帯の重なりから辺を作成する手法でできたグラフは、区間グラフあるいはIntersection Graphと知られており、さまざまなバリエーションのあるグラフの族です。また、さまざまな場面で応用されているグラフの族でもあります。で、私の研究分野の半順序集合論的グラフ理論は、生態系における食物網をIntersection Graphの観点から解析することに用いられています。すなわち、食物網上の捕食者、被食者、ニッチ等の関係をグラフ理論的に捉え生態系への研究へ役立てようとしています。生態系の持つグラフ理論的側面を解析していると興味が尽きません。生態学の専門家との共同研究を通じていろいろな成果が得られています。

フロリダの会議のあとボストンのMITによって、研究に関する議論を交わしてきました。夏のフロリダ、吹雪のボストンと移動し、日本へ帰ってきました。会議に出席すると研究の新たな種を拾えるものですが、今回も多くの種を得ることができました。どのような実を結ぶかこれからじっくりと育ててゆきたいと思っています。